インテグラルフォトグラフィはリップマンホログラムで知られるリップマンによって考案された。このことからインテグラルフォトグラフィとホログラフィは基本的に同じ目的を持つ技術だと考えられる。
どちらも光の場を記録し、忠実に再生することを目的とする。これを波動光学によって実現したものがホログラフィ、幾何光学で実現するものがインテグラルフォトグラフィと言うわけだ。このことからインテグラルフォトグラフィは、ホログラフィと同様にあたかもそこに物体が存在するかのようなリアルな立体像を再生することを目的とすることがわかる。
インテグラル(イメージング)はインテグラルフォトグラフィをビデオやCGを使った技術にまで広げた概念だから、基本的に元となるインテグラルフォトグラフィの考え方を継承してリアルな立体像にこだわるものであり、このことが多眼式との決定的な違いだと私は考えている。
リアルな3Dという条件は、結果としてインテグラルの表現幅に厳しい制限を付与することになる。表現できる奥行きの範囲が狭いということだ。
インテグラルフォトグラフィの説明図を思い出して欲しい。物体からの光をレンズアレイによって記録するが、その物体はいつもレンズアレイに近い位置にある。遠くの景色を写すような説明図は見たことがない。これは物体に照射したレーザー光を記録するホログラフィの説明と同じで、どちらも手頃な距離にある被写体しか撮影できず、遠く離れた景色は撮影できないのだ。
その理由をインテグラルの表示を使って説明しよう。インテグラルは下図のように並んだ縮小像を対応する小さなレンズによって投影して立体像を表示する。レンズアレイからの距離は投影倍率と比例するから、奥行きの(絶対値が)大きくなるほど拡大倍率が大きくなって像がぼやけてしまう。このため鮮明な像が見える範囲はレンズアレイに近い位置、すなわち奥行きの小さい範囲に限定される。こういった奥行きの制限については以下の研究例からもわかるだろう。
http://www.atre.t.u-tokyo.ac.jp/publications/2004/Proc_3D-Conf_2004_K-Nomura.pdf
以前ある人に
「インテグラルフォトグラフィは原則接写になる。」
と言ったら、それは致命的な欠点だと指摘されたことがある。
まさにその通りで、インテグラルの奥行き制限は表現の自由度を著しく狭めるため、3Dテレビや3D映画に使うのには向いていないのだ。
< 11月11日 図を訂正しました >