T社のグラスレス3Dはインテグラルイメージング方式と称してはいるが、実際は多眼式の3Dに分類される。これは以下の資料からもわかる。
http://www.ite.or.jp/ronbun/nenpo2008/frame/frm-set-r517.html
インテグラルイメージングがT社の造語であれば勝手に使ってかまわないだろうが、この言葉は学術的にも使われる一般的な単語だ。インテグラルイメージングと多眼式の違いは例えば以下に議論されている。
http://home.jeita.or.jp/device/lirec/symposium/fpd_2009/doc/4e_koike.pdf#search='多眼識 インテグラル'
この考え方は私の実感とは少し異なるのだが、これによっても例のグラスレスは多眼式であってインテグラルイメージングではない。
営業的な目的でかっこいい言葉を使っているのだとしたらちょっと行儀が悪いと思う。T社にはプライドの高い技術者集団というイメージを持っているだけに残念だ。
インテグラル(以下イメージングは省略)と多眼式の違いについて、私的な意見を以下に書いてみたい。
どちらの方式でも各単レンズに対応する小画像を要素画像と呼ぶ点は同じであるが、その捉え方は異なる。
多眼式では要素画像は多視点像の画素(ライン)を抽出して並べたものである。左右の目にはそれぞれ多視点像の一つが見えるように設計されるが、実際には隣の画素(ライン)が少し混じって見えることがあり、これをクロストークと呼んでいる。クロストークはオーディオでも使われる用語だが、本来分離されているべきものが実際には混じってしまう場合、分離度を表すために使われる。
一方インテグラルでは要素画像は縮小像で、これがレンズで投影されて立体像が形成される。要素画像は画素まではっきり分離されて投影されることが望ましいが、実際にはぼやけて隣の画素と重なり合ったりする。これは多眼式でクロストークと呼ばれる現象と実質的に同じものだが、例えば写真のピンボケをクロストークと言っているのは聞いたことがないから、インテグラルの考え方ではボケかにじみと言うのが正しいだろう。
つまり要素画像が多視点像なのか縮小像なのか、画像の崩れがクロストークかボケなのかで、その人がインテグラルの考え方をしているか多眼式の考え方をしているかが区別できるのだ。
以上は観念的な説明だが、次はもっと実質的な違いを説明する。