つくば市の回らない風車問題では、見慣れないダリウス・サボニウス風車が使われている。風力発電に詳しい方々は、風車が回らない原因は風況判断を誤ったことにあり、風車の種類には関係ないと考えられているようだが
http://blog.goo.ne.jp/kynthm/e/e7e1eab4f6d8651efd975d9899cf09ba
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/c210885d99caa35651c173b88ed292c6
この事業にはイーアンドイーや早稲田大学など、それなりの専門家が関わっているのに、なぜわざわざ風況の悪い場所に設置することになったのだろうか。
噂によればこの風車の採用はかなり早い時期に決まっていたようであるが、もしこの計画がこの風車を使うことを前提として考えられたものであるなら、このことが風況判断を誤らせた原因であるとの推測も成り立つ。
垂直軸のダリウス風車は、風向きに関係なく回る高効率風車であるが、完全な揚力風車であるため自発的に回転を始めない。そのため最初はモーターなどの動力を使って起動する必要がある。ちょうどセルモーターを回してエンジンをかけるようなものだろう。
このダリウス風車にパドル風車やサボニウス風車などの自発回転する抗力風車を併設して、起動の手間を省くアイデアは多くあるが、実用化した例はあまり見られないようである。
問題となっているダリウス・サボニウス風車は、ダリウス風車の内側にサボニウス風車を設置することで、ローターのサイズが大きくなることを避け、(ダリウス風車の適正周速はサボニウス風車の4倍程なので)さらにサボニウスのローター径をダリウスローターの、たぶん1/4程に小さくすることで、両風車の適正回転数を一致させたものと思われる。
風車メーカーのホームページに書かれていることはいいことずくめで、あたかもダリウス風車並の効率を保ちつつ、微風でも自発回転するように書かれているが、
http://www.eande.jp/technology/
実際にはそう都合の良い物ではなく、報告書にはサボニウスローターによる気流の乱れがダリウス風車の効率を落としていることが指摘されている。
http://www.rise.waseda.ac.jp/2001ASTE/2001ASTE-T/joshu-T/ASTE01J11wakui.PDF#search='繝繝ェ繧ヲ繧ケ繝サ繧オ繝懊ル繧ヲ繧ケ'
つまり効率については単純なダリウス風車に及ばないのである。
では効率の劣るこの風車が、ダリウス風車に対してメリットを主張できるのはどんなケースなのか。
単純に一定の風速下では、ダリウス風車は起動電力が必要なため最初電力のロスを生じるが、一旦回転を始めればダリウス・サボニウス風車より効率よく発電するため、下図のように所定の時間で発電量が逆転し、結局単純なダリウス風車の方が勝ることになる。
一方風速が不安定な条件、例えば一定の時間風が吹いた後、止んでしまうような吹き方を繰り返す場合、すなはち下図のようにダリウス風車が起動ロスを取り返すころには風が止んでしまうような条件では、起動電力を必要としないダリウス・サボニウス風車が有利である。
つまりこのダリウス・サボニウス風車は、コンスタントに風が吹く好条件下では従来のダリウス風車に劣り、風速が不安定な悪条件下で初めて優位性を主張できるものであるので、風況の良い場所に設置するのは好ましくなく、あえて悪条件の街中に設置する必要があったのである。
以上はかなり天の邪鬼な推論ではあるが、ひょっとするとつぼの一つを押さえているかもしれない。彼らにとっての計算違いは、悪条件下で回るはずだった風車がやっぱり回らなかった。ただそれだけかもしれない。