数年前までハエの目レンズを使った立体表示がインテグラルイメージ、レンチキュラーレンズを使ったものはレンチキュラーイメージと考えていたので、T社がレンチキュラーレンズを使った3Dをインテグラルイメージング方式と称したことにははなはだ違和感を覚えた。その後レンチキュラーレンズを使うインテグラルが一般化し、今では私も一次元の「インテグラルイメージ」という言葉を使うようになったが、それでもまだ違和感はある。
「一次元のインテグラルイメージ」はある条件を満たすレンチキュラーイメージを表すには理にかなった表現だ。その条件とはインテグラルの目的であるリアルな3Dを実現することで、リアリティにこだわってレンチキュラーイメージを作ることは、まさに一次元のインテグラルイメージを作ることに等しい。
一次元のインテグラルイメージと通常のレンチキュラーイメージとの違いを理解するために、例えば画像ラボの以下の記事を見てもらいたい。
「レンチキュラー方式3D ディスプレイを見直そう」 画像ラボ 2011年2月号 43 頁~51頁
元となる多視点像の視差は大きすぎるとクロストークが目立ち、逆に小さいと立体感が弱いので、これらのバランスをとって視差を調整するという趣旨が説明されている。一般的なレンチキュラーイメージは基本的に奥行きのある3Dで、リアルな3Dではないので視差を変えてクロストークや立体感を調整することが許される。
これに対してインテグラルでは表示する物体とその配置が決まれば視差は決まってしまうので、これらの選択以外に視差を調整する手段はない。これは物体の奥行きを制限することに他ならない。
以下の記事は以前にあったT社のインテグラルイメージング方式(光線再生方式)である。
http://journal.mycom.co.jp/news/2005/04/15/012.html
斜めに見ることを前提とした3Dはアナグリフの一種であるファンとグラムをレンチキュラーイメージで実現したものと考えられるが、この時のインテグラルイメージング方式はあたかもそこに物があるように見える、リアリティを重視したものだった。これであるなら敢えてインテグラルを称することに異論を唱えるつもりはないが、現在製品化されているグラスレス3Dはこれとは異なり、単に奥行きを感じる普通のレンチキュラーイメージであるように思う。
ここで紹介した上記の記事からも類推できるように、インテグラルはVR(バーチャルリアリティ)との相性が良い。